ハロー・ハロウィン

 

 

 鷹村は鴨川ジムでは滅多に(むしろ今までに一度も)お目に掛からないであろう物体を目の前にして、少し考え込んでしまった。

 慎重とは程遠い性格の持ち主を考え込ませた物体は、ここがジムで無ければ何処にあっても不思議では無い極日常的な物だったが、鷹村にはどういった経緯でそれが此処に在るのかまったく想像が付か無いでいた。

「なんでこんな所に南瓜が在るんだ?」

 ジムのボクシング用品を置いてある棚の端には、でっぷりとした、堂々たるオレンジ色の皮をした南瓜が、窮屈そうに収まっていた。思わず手を伸ばしてしまう。

「ん?!なんでぇこりゃあ?」

 その外見から想像していた重さはまったく無く、実に軽々と持ち上げられた南瓜をひっくり返してみる。

 

 一一一どっかの誰かを彷佛とさせやがる………

 

 南瓜は中身がくり抜かれていた。

 しかもその厚い皮には、真ん丸のでっかい目に、多少歯並びは悪かったが文句無しの笑顔が彫り込まれている。丸々と太り、明るいオレンジ色が、増々鷹村にある人物を思い浮かばせた。

 

 

**********

 

 壁一面に貼られた鏡を前にシャドーしていると、不意に甘い香りが何処からともなく香って来た。青木は思わずシャドーを止め、辺りを見回してしまう。今現在プロに差し迫った試合が待つ選手はいないとは言え、その匂いは此処でしては些か不味い匂いであった。

(誰だよ?ジムに菓子類持って来やがった愚か者は………間違い無く理不尽大王に喰われるぞ。あの熊は以外と甘い物も良く貪り喰うからな…………)

 青木の心配の方向は多少ずれていた。が、ある意味正しい心配と言えよう。

 

 ジム内を見回してみたが、勿論そこら辺に菓子の袋が落ちている事も無く、匂いの元は分からなかった。

「そう言やあいつはもう来てたっけか?」

 頬をボリボリと人差し指で掻きながら、『お菓子=子供=童顔』の連想ゲーム的思考で、ある人物を思い浮かべる。思い浮かべた序でに、今日は久しぶりにラーメンでも奢ってやるかな?と言う気になる。

 何処までも甘い性格の、子犬のような後輩に対しては、青木も無自覚についつい甘い態度をとってしまう。

 あの大きな瞳で純粋に慕われると、弟を持ったような気がして、構いたくなってしまうのだ。

 最近ブロッコマン人気で岩田中華料理店にも、子供向けにラムネ等のジュース類を置くようになった。それをストロー付きで出してやれば、相手はどんな顔をするだろう?

 

 自分の愉快な想像に思いのほか満足いき、青木はジム後の予定を決定していた。

 

**********

 

 木村はジムへの道程を何時も通り歩いていた。

 否、自分では何時ものペースで歩いているつもりだったが、段々早足になっていたようだ。理由は分かっている。出掛けに店からある物を失敬したからだ。それを渡した時の反応が早く見たくて、つい早足になってしまう。

 

 数年前まで日本では余りメジャーではなかった行事が、一般化し始めて来た近年、そういったイベント事には敏感な家業である木村園芸店では、秋も深まるこの時期、同じ植物だからといってもどちらかと言えば花屋より八百屋の方がしっくり来るある商品を取り扱い始めた。

 だが、どうやらその商品は主にディスプレイを中心に考えて作られているらしく、食べても余り美味しく無いそうだ。そのイベントも昨日終了してしまった。

 店のディスプレイ用にくり抜かれたそれが廃棄されようとしている所を偶然発見してしまい、木村は思わず両親にいらないのならくれ、と頼んでいた。

「ジャック オア ランタンか………」

 手から下げた紙袋がガサリと鳴り、目に鮮やかなオレンジが視界の端に写った。

 西洋的な洒落っ気から掛け離れた人物に、どうしても実物を見せてやりたくなったのだ。

 きっとこの南瓜の様に、只でさえ丸い瞳を更に丸くして感心するのだろう。そんな相手に、この南瓜の由来なんかを話して聞かせたら、きっと随分面白い出来事では無いだろうか?それは抗い難い魅力だった。

 そう言う訳で、木村は些かにやけた顔付で、ジムへの道程を何時もの1.5倍の速度で歩いていた。

 

**********

 

 鞄からは甘い良い匂い。ジムに持って来るのは一瞬どうかと思ったが、これは生物なのだ。一刻も早く渡して味わってもらい、その可愛らしい笑顔を見せてほしかった。

 今年から、板垣の住む町内会の子供会で、ハロウィンが行われるようになった。

 貧乏暇無し、とは言え、昔から助けつつ助けられしつつし、親しく付き合って来た御近所様だ。町内会で執り行われる祭り事には極力強力するのが昔からの板垣家の習わしだった。

 と言う訳で、昨日板垣家では、母お手製の(最近では毒物混入事件等、本来なら店で買った物が好ましいのだが、其処は昔ながらのおつき合いがある地域だ)安くて美味しいクッキーが小袋に入れられて振る舞われた。

 あらかじめ子供達の人数は聞いていたが、何かあっても困らないようにと、大量にそれは焼かれた。もちろん防腐剤等一切入ってはいないので、できれば今日中に完食が望ましい。

 それを理由に、板垣の尊敬する人物にお裾分けを思い付いた。

 

 一一一彼も自分と同じく甘い物は好きな方だ………きっと顔中綻ばせて喜んでくれるに違い無い。

 

 このクッキーに負けないくらい甘いあの声で早くお礼を言われたいと、板垣は飛ぶような軽い足取りで、ジムへの道を駆けていた。

 

**********

 

「おはようございます!!」

 ジムの引き戸を開け、何時ものように元気良く一歩は挨拶した。その一歩の挨拶に、ジムに居た練習生達は、おのおの挨拶を返す。一歩はそれらにいちいち会釈を返しながら、ロッカールームへと歩を向けた。

「よお、一歩」

「あ、鷹村さんお早うございます」

 まさにロッカールームへ続く扉に手を掛けようとしたタイミングで、一歩のすぐ後ろから声が掛けられる。一瞬びくりと心臓が跳ねたが、あの大きな身体でどうして、鷹村は気配を消して近付くのが上手かった。さすがに何年も付き合っていると、当初の様に狼狽えた声を上げる回数は減っていた。

「お前に良いもん見せてやろうか〜?」

「へ?良い物、ですか?」

 いやずら盛りのガキ大将のような得意げな顔をして、鷹村はニヤリと笑った。

 こう言う笑い方をする時の鷹村は要注意だ。時折洒落にならないとんでもない事をしでかすからだ。思わず条件反射で逃げたくなるが、後ろは閉ざされた扉が、前にはその圧倒的な身体の肉壁がそびえ立っている。

 ビクビクと怯えつつ、思わずリュックサックを身体の前に持って来て抱き締めてしまう。

 後手に回されていた鷹村の左腕が素早く閃いた。

「…………?南瓜???」

「うむ。それも只の南瓜では無いのだ。見ろ」

 鷹村は何故か偉そうにふんぞり返り、南瓜をひっくり回すと、其所には大きな目と口が彫り込まれたいた。

 何処か愛嬌のあるその南瓜と、一歩はたっぷり10秒間はお見合いしてしまった。

「え…と、これは?」

 キョトンとした一歩の顔付に、鷹村は増々笑みを深める。

「これ、何処かの間抜け面した奴に似ていると思わねえか?」

「僕、ですか?」

「珍しく察しが良いじゃねぇか!!そうだ。こいつはお前を象って作られた物だ。」

「ええ?僕をですか?」

「所でこれは、何に使われる物か知ってやがるか?」

 一歩はブンブンと扇風機の様に首を横に振った。似ている…とは自分では余り思わないが、自分を象ったらしい南瓜の作り物から目が離せないので、そりゃあもう悪そうな顔付をしている鷹村にはまったく気が付かないでいた。

 鷹村は一歩に顔を近付け、声を低くしてそれらしく囁いた。

「呪いだよ…呪い。一歩、お前何をしやがった?こんな悪質な呪いを掛けられる程の悪行を………」

 

「え・えぇぇえぇえ?!」

「あ〜?!あんた、何やってるんだよ!!」

 

 ジムに同時に二つの叫び声が上がった。

「木村さ〜〜〜ん」

 一歩は涙目になりながら、今し方ロードから戻って来たらしい、ジムの扉を開け中に飛び込んで来た木村の顔を見た。

「せっかく俺が一歩に見せてやろうと持って来てたのに!!油断も隙もありゃしねえな…」

「っええ?じゃ・じゃあ、僕に呪を掛けているのは木村さんですか?!」

「はぁ?!」

 ブツブツと鷹村に対して文句を言う木村の台詞に、一歩は心底仰天した。しかし、一歩のその台詞に更に仰天したのは木村の方だ。二人の様子を見て、鷹村は堪え切らないと盛大に噴き出し始めた。

「ぶはははは、馬ぁー鹿、馬ぁー鹿、嘘だよ〜ん。お前みたいな小物に誰が呪なんか掛けるか!!!」

「酷いですよ〜鷹村さぁ〜ん!!言って良い嘘と悪い嘘があると思います!!!!」

 二人はその場でぐるぐると追いかけっこを始めてしまった。片方はそれも楽しんでいる様子で、もう片方は本泣きを曝しながら…一人取り残されてしまった木村は、側で縄跳びをしていた青木に事情を訪ねる羽目になったのだった。

 

**********

 

「そんな直ぐばれそうな嘘、信じる奴が今時いるかよ……」

「でも目の前にいるだろーがよ」

 青木から説明を受けた木村は多少の疲れを感じつつ、追い掛け回していたはずが、何時の間にか逆に追い詰められヘッドロックを噛まさている後輩を見遣った。

「しっかしこの御時世にハロウィンを知らねぇ奴が居るとはなー」

「それ、鷹村さんの前で言わない方が良いぞ。あん人も、南瓜を眺め眇めしつつ、しきりに不思議がってたからな。まあ、ちっちゃい子供がするような祭りを知らなくても可笑しかねぇよな。ちゃらんぽらんな見た目裏切って、あの人も大概ボクシング馬鹿だからよ〜」

 んな小洒落た事知ってるような玉じゃねぇよ〜〜〜と言って、馬鹿笑いする青木の背後に、黒い小山が突如現れる。木村は今だ高笑いを続ける青木からさり気なく距離を取った。

「ほほう、誰が馬鹿だって?」

「い・いや?何の事っすかぁ〜?鷹村さんの聞き間違えじゃないっスかね〜?」

 直ぐ真後ろから聞こえて来た声に、青木は咄嗟に走って逃げようとしたが、Tシャツの襟刳りを捕まれ、慌てて避難の方向性を変える。さすがここら辺の切り替えは長年付き合っているだけあって素早い。だが、鷹村は何が何でも青木をいたぶる方向で決めていたようだ。

「生憎俺様の耳は貴様ら小物と違って高性能でなあ…くらいやがれ!!ジャーマンスープレックスゥ!!!」

「おいーーー!!!それはさすがに死ぬだろぉ?!ジムの床はコンクリーーーーー」

 南無三。成仏してくれよ…骨は拾ってトミ子に届けてやるからな、と心の中で呟き木村は今の隙にと、鷹村から解放されほぅと息を付いている小柄な影に向かう。

「あ、木村さん」

 近付いて来た木村に気が付いた一歩はにっこりと笑って、手にした南瓜を持ち上げた。

 ジャック オア ランタン片手に嬉しそうな姿は、木村には結構な視覚的暴力になった。

(落ち着け落ち着け〜何良い嫁さんになれそうだな。とか思ってんだ…)

「それでこの南瓜は本当は何々ですか?」

「ああ、それはな…」

 

**********

 

「へぇ〜外国にはそんなお祭りがあるんですか!!日本の七夕祭りと一寸似ていますね」

 案の定先刻の想像通り心の底から感心している様子の一歩に、木村はいたく満足していた。木村さんは何でも知っていて凄いな〜と素直に賞賛の瞳で見上げられるのは、酷く誇らしく嬉しい。

「そんなに感心したんならそれ、一歩にやるよ。家の人にも見せてやったら喜ぶんじゃねえ?ハロウィンは過ぎちまったけど、魔よけなんだ。店に飾っといても邪魔にゃなんないだろ?」

 一応プロが作ったもんだから、2・3日は置いておいてもカビなんか生えねえからよ。そう言う木村に一歩は、それこそそんなに大きく見開いたら目ん玉零れるんじゃねぇか?とこちらが心配になる程見開いた後、キュウっと音が聞こえて来そうになるぐらい細め、それはそれは嬉しそうに微笑んだ。

「うわあ、ありがとうございます!!きっと母も珍しがって喜ぶと思います!!!」

 たかが南瓜の彫り物一つでそこまで喜ぶ後輩の姿に、木村は照れるが、しかしこんなに喜ばれるのなら、七夕の笹や、クリスマスのリース。果ては門松なんてさり気なくプレゼントして点数稼ぐのも意外に良いのかもしれないと、ヤニ下がった面の裏で考えてしまう。ジャック オア ランタンをやったのは本当に下心無しの只の思いつきだったが(それにこんな物貰っても困るのでは?と考えていたし)、意外な効果に己の家業に一瞬本気で感謝する。

「そっか、そんなに喜んでもらえると、そいつも嬉しいんじゃね?お役ごめんで捨てられる所だったしよ」

「そっか、そんなに喜んでもらえるんなら、ついでに僕の真心も貰って下さい!!」

「ってどぅあ?!板垣、どっから涌いて出やがった?」

 せっかく良い雰囲気だったのに!!とはかろうじて木村は叫ばなかった。が、小さく舌打ちをしてしまうのは止められなかった。

 板垣は無言でロッカールームを指し、木村には一切視線を寄越さず一歩に詰め寄っていた。

「これ、昨日のハロウィンで配るのに家の母が作ったんですが、作り過ぎちゃって家だけじゃ食べ切れないんで、先輩貰ってくれませんか?確か甘い物は大丈夫でしたよね?」

「え?うん、家は皆甘い物が大好きだよ…」

 そこまで言って、一歩は躊躇うように板垣が差出した髪製の茶色い袋を受け取った。

 思っていたより余り嬉しそうではない一歩の反応に、あれ?と思った板垣は、チラリと木村に視線をやる動きでああ、と納得が行く。

「勿論ジムの皆さんの分もお裾分けは持って来ていますから、遠慮はしないで下さい」

 当然のようにその量は違うが、そんな事はチラとも臭わせず、板垣は爽やかに笑う。その笑顔につられ、一歩も花が綻ぶようにふわりと笑った。

「ありがとう、学君。あ、君のお母さんにもありがとうって伝えておいてくれる?美味しく頂くよ」

「は、はい先輩!!母も先輩に美味しく食べてもらえたら、きっと喜ぶと思います」

 どうせなら、僕も一緒に美味しく…否、僕が美味しく先輩をいたがきたいなどと不埒な事を考えつつ、どさくさにまぎれて一歩に抱き付き、板垣は間近で思う存分一歩の可憐な笑顔を堪能する。

 うぇふ、おほっん。等とわざとらしい咳払いが聞こえて来て、精力的に意識の外に追いやっていた存在を板垣は思い出した。

「その菓子、俺らの分も在るんだろ?さっさと配っちまえよ。丁度今全員揃ってるからよ」

「はあ、そうですね。でも今は大切な後輩先輩のスキンシップ中ですからvV」

 何の臆面も無くそう言ってのける板垣に、木村は思わず心の中で歯ぎしりする。心持ち顳かみが引きつっているような感じがした。

「ほほう、一歩以外は先輩では無いと?それとも一歩の前ではそれを配れない理由でも?」

 木村は板垣が恐らくプレゼント内容に差を付けているだろう事を見抜いていた。何よりも悲しいかな板垣は貧乏性なのだ。一歩に捧げ物を貰ってもらうには分け隔てを作ってはいけない事は理解しているだろうが、無駄な労力は省きたいはずだ。

「やだな〜木村さん、何笑えない冗談言ってるんですか!そんなに僕の事好きで好きでたまらないんですかぁ?」

 見えない黒い火花が両者の間に散った。

 見た目には大変にこやかにじゃれあっているように見える木村と板垣に、一歩は本当にこの二人は仲が良いな〜同じアウトボクサー同士やはり通じ合うものがあるのかな?等と見当違いな事を考えニコニコしていた。争いの元がこうなのだ。易々決着等着く訳も無く、傍か見れば三者三用笑顔で異様なオーラーを放つ、摩訶不思議空間が出来上がっていた。

 そんな空間に飛び込める人物等居ない。他のジム生は遠巻きにして見えない振りを決め込んでいた。事態はそのまま硬直するかの様に思われた。

「おお〜い、一歩ォ〜〜〜」

「はい?鷹村さん」

 否、一人だけ居た。鷹村は青木の頭を小脇に挟み、三人の元にのっしのっしと近付いて来た。青木は生きているのだろうか?随分大人しいように思われた。

 一歩は思わず小脇の青木を視界に入れないようにして鷹村の方に向き直った。

「青木が今日奢ってくれるってよ。母ちゃんに電話しとけよ。今日夕飯いらねーってよ」

「え…あの…」

 一歩は戸惑いながら悲惨な様子の青木に視線をやる。と、弱々しくも鷹村の脇の下から青木が顔を上げた。

「おう…一歩…久しぶりに俺のラーメン喰ってけ………新作ラーメンがあるんだよ…し…試食………」

 そこまで言うと、青木はがっくりと力つきる。そんな青木の様子を気にも止めず鷹村はガハハと笑った。

「こいつもこう言ってることだしよ〜有難くお相伴に預れっ!勿論お前らも行くよな〜」

「はい!!!」

「勿論」

 ただ飯が食えると板垣は意気込んで。一歩とのふれ合いが増えるのならと木村は当たり前のように。

 そんな二人の様子に、青木はお前らまで奢ってやらねぇと、抗議の呻き声を上げるが綺麗に黙殺された。

 なんだか悪いな〜と感じていた一歩は、何かを思い出したのかあっと声を上げ、リュックサックの中をごそごそと漁り、あるお菓子のパッケージを取り出して青木に差出した。

「青木さん、しっかりして下さい。疲れた時は甘い物が良いんだそうですよ?」

 昨日偶然久美さんに会って、お裾分けだって言われた時は何の事だか分からなかったんですけど、きっと病院の小児科でもハロウィンが行われていたんですね〜。そう言って、無邪気に笑ってお菓子の袋を開けて青木に差出す。

 キョトンと一歩とそのお菓子の袋を見比べ、青木はブッと噴き出した。

「一歩にミルキー…一歩にミルキー!!!似合い過ぎる!久美ちゃんも粋な事するな〜〜〜」

「ええ?それ、どう言う意味ですか〜〜〜」

 励まそうと思ってやった行動だか、意図した所と違う意味で浮上され、一歩は少し不本意な気持に落ちいった。

「おう、それ、奥歯にくっついて中々取れねえんだけど結構上手ぇんだよな〜〜一歩俺様にも寄越せ」

「わあ〜ミルキー!!僕大好物なんです。僕も少し貰ってもいいですか?」

「たまには懐かしの味も良いもんだよな。一歩、俺にもくれよ」

「なんだよ、一歩は俺にくれるって言ってんだよ!!出しゃばるなっての」

 わあわあ言いながら四人は喧嘩を始めてしまった。一歩はオロオロしながら止めに入る。

「ミルキーはいっぱい有りますから、喧嘩しないで下さーーーい!!!」

 

 その日は青木の働く店に場所を移しても、四人は何かと言ってはぎゃあぎゃあとじゃれあっていた。その中心にいるのは何時でも一歩で、その顔は困っていながらも何処か楽しそうだった。

 オレンジ色のジャック オア ランタンの様に、その顔から笑みが絶える事は無かったのだ。

 何処か幸せそうなイメージの先にいるのは、何時もそうやって幸せそうに笑う存在が思い浮かぶものなのだ。

 

 一日遅れの、HAPPY HELLOWEEN!!!

 

 

 

おまけ戻る